No, no, you’re not thinking; you’re just being logical.
みなさんお元気ですか?
コロナ禍の夏は自由な動きや楽しい行事などが制限され、「本来ならば」と普通だった楽しい夏を思うと少し悲しくなりますね。ですがこれからは、ただ引き籠る消極的な戦いではなく、感染対策をしながら、新しい形でいつもの生活を取り戻していく積極的な戦いが始まります。
日常がどう変わってしまうのだろう?今までの生活に戻れるのか?様々な不安はありますが、そんな不安は偉人の名言・格言の力で打ち消しましょう!
というわけで、私からは物理学者であるニールス・ボーアがアインシュタインに向けて放った “No, no, you’re not thinking; you’re just being logical.” という言葉を紹介させていただきます!
この言葉の意味は「いやいや、君は思考していない。論理的になろうとしているだけだ」です。アインシュタインは皆さんご存じの天才物理学者ですが、意外にも彼は今では常識とされているある理論を信じられずにいました。その理論とは、粒子は同時に波でもあり、物体の存在は「絶対にここにいるぞ」ではなく「確率的にここにいる可能性が高いぞ」という風にしか言えないというものです。何言ってるんだという感じですが、原子よりも小さい粒について実際に実験をしてみた結果を、完全に説明できる考え方がこれ以外にないので、今では皆がこれを信じています。(大学での理学では数学や物理が実は脆く、完璧無比ではない例は少なくありません)ボーアは実験から得た事実だとしてこの考え方を信じていましたが、アインシュタインは物理が確率で決まってたまるかというこだわりからこれを批判していました。2人はこの考えをめぐって白熱した議論を交わしていますが、そんな中であの言葉が発せられたのです。
あの天才でさえこんな根本的な間違いを犯すことがある、いや天才だからこそあの間違いをしたのではないかと私は思います。アインシュタインには「正しい物理学をもってすれば世界は完璧に記述できる」という自分の世界がありました。だからこそ、これまでの物理学を覆すような偉大な理論を作ることができたし、様々な謎を解決することができたのですが、最後はあまりにもその美学にこだわりすぎて、妥当な考え方を受け入れられずにいました。そんな自分が作り上げた物理学にしがみついて離れないアインシュタインを、ボーアは思考しているのではなく論理的になろうとしているだけと揶揄したのです。
実はあのニュートンも同じように自分が築き上げた物理学にこだわって、最後に今では常識となっている考えを批判し、自分の理論を作った結果、間違っていたことがあります。これはどんな物理学者にも、そしてほかのどんな人にも同じことが言えると思います。特に、今まであった様々な当たり前が瓦解しつつある最近の世界の情勢では、以前の常識にとらわれて新しい流れに置いて行かれることは誰にでも起こりえることではないでしょうか。新しいテクノロジー、新しい社会の形は今もなお既成のものを凌駕し続けています。これからの時代をどう生きるか。変化に気づかず前の常識にすがりつくのか、新しい流れに飛び込むのか。この言葉からは挑戦への活力がもらえるような気がします。
おそらく興味のなかっただろう物理の話を最後まで読んでくれてありがとうございました!あまり注目を浴びることがありませんが、実は科学者には多くの面白いドラマやその中で生まれた名言があります。その分野に詳しいかどうかに関わらず、感動に胸打たれることは沢山あるので、是非チェックしてみてくださいね!
次回も本基金のメンバーから英語の名言・格言についての記事があがりますので、またいらしてくださいね!お楽しみに!!
(文責:髙橋大智)